もはや絶滅種・・・?
古本屋で「遠山の金さん」を見つけて、思わず買ってしまいました。
でも、表紙の美人画がちょっと怪しげなのと、時代小説には時々エッチなものもあるので、エッチな金さんだとちょっと困るな・・・と思いつつも、思い切って買いました。
作者の山手樹一郎さんは、私はあまり知らなかったのですが、見たことだけはあるなと思ったら、「桃太郎侍」の原作の方だったのですね~。
きっと時代劇のクレジットなどで見たのだと思います。
しかもこの方、山本周五郎の編集者だったそうで、私は周五郎ファンなので、それだけでもちょっとぐっときました。
金さんは昔からテレビで大好きでした。
色んな方が金さんをやりましたが、時代劇をよく知っている方からは中村梅之介さんの名前などがやはり一番に挙がりますね。
リアルタイムには見ていなかった世代なので、再放送などで是非見たいものですが、昔のものですから、なかなか難しいかもしれませんね~。
以前NHKで金さんをやったことがありました。10年くらい前でしょうか。
金さんが町奉行になる前のお話で、長崎奉行である父との確執を描いたもので、これは結構楽しみに観ていました。
金さん独特のお白州での爽快感はないのですが、父と息子の相克はやはりいつの時代もぐっとくるテーマです。
ところで、山手樹一郎さんの「遠山の金さん」は、期待していた通り、奉行になる前のお話でした!!
エッチ度は、そうですね、江戸川乱歩よりちょっと軽いレベルというところで、その昔はエッチと言えるものだったのかもしれません。
後妻の息子である金さんは、家督を弟に譲りたいという病身の長男(前妻の息子)に遠慮して、旗本の家を出てしまい、決して家には帰らない決意です。
行くところも、生産能力も全くない金さんは、遊び人になることにし、今や遊び人として売り出し中です。
そして、ひょんなことから船宿の看板娘を助けて、彼女のヒモになります。
このあたりまで話すと、
「これは男の鑑だな~かっこいいな~~」
と家人は感心しきり。
ヒモって、ヒモって、男の究極の夢なんでしょうか・・・?
金さんは実際にいた人だそうですが、ほんとに遊び人だったんでしょうか・・・。
お白州での遊女との会話なんかが伝説で残っていて、後年決して肌を見せなかったそうですから、桜吹雪は本当だったのかもと思うと、なんだか夢があります。
こういう粋な遊び人の雰囲気というのは、多分今の若い役者さんではなかなか出せないのでしょうね~。
このごろの時代劇は、若い役者さんがなかなか育たなくて、見ていても大変そうだな~という心配が先に立ってしまいます。
本当は、金さんは若い人のはずですし、やっぱり若い色気のある役者さんで金さんを観たいな~と、心の中でないものねだりをしているわけです。
山手さんの金さんは残念なことに奉行になるところまでは至りませんでした。
ほのぼのとした遊び人の捕物帖みたいな感じで終わります。
お白州が見たいのに
とはいえ、後ろ盾もない金さんが、遊び人の分際でどういうわけか周囲の尊敬を勝ち取っていくあたりは、やはり見甲斐がありました。
一目置かれる男というのは、こういうものかとうっとりします。
今では考えられない、最早絶滅してしまった日本的なヒーローの型でしょうか。
善悪だけではない、清濁併せ呑むというか、そういう、ゆるやか~に赦すヒーローで、悪人もぎりぎりまでは追い詰めず、含みを持たせる・・・・。
悪人もそれほどの悪人じゃなかった昔でなければあり得ない解決の仕方かもしれません。
アメリカ的なヒーローも好きだけど、なんというか、次元が違う感じですね。
彼らは黒か白しかないですものね~。
こういう表現は、もうどなたもできないのかもしれませんし、TVなどでは支持されにくいのかもしれないと思うと、寂しい気がします。